ぽつぽつとエール

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今週のお題「雨の日の過ごし方」

雨の降る日はただ、雨を眺めて過ごしてしまう。

 

雨降りだからこそ気のきいた過ごし方をしようと思ってみる。

美味しいお茶でもいれようかなとか、やりかけの趣味に手をつけようかなとか、手紙を書いてみようかなとか。でもどれも全然できなくて、結局はただ雨を眺めて過ごしてしまう。

 

雨の中、高校生の私は母の車を待っていた。

その日は学校でとても嫌なことがあって母に、迎えに来て、と公衆電話から頼んだ。

母を待つ間もしとしと、ざーざーと雨はリズムを変えながら降り続いている。

顔にかかった雨の雫が、どうか涙に見えませんようにと、ハンカチでぬぐった。

 

あいにくの雨、普段めったにはかないスカートをはいた。今日のためのスカートを濡れないようにと、裾をそっとつかんで出かけた。

 

朝から雨の日。仕事に行きたくないなと開いた傘のせいで、手に持つ鞄がいつも以上に煩わしい。スローペースな歩調で、私は傘の群れに混ざっていく。

 

きっと誰の中にも「雨の日」にカテゴライズされた記憶があるんじゃないだろうか。

私の場合はいい記憶もたくさんあるけれど、雨の温度に引きずられるのかひんやりとした記憶が多い。

 

今日も降る雨を眺めて過ごす。

「いろいろあったなぁ」

とひとりつぶやく

「本当によくやってきたよなぁ」

と声に出してみる。

 

降る雨につられて、雨に飾られた日を思い出す。

ゆるいエールを、ぽつぽつとつぶやき自分に送る。

それが私の雨の日の過ごし方。